解雇が使用者からの一方的な契約解除であるのにたいして、退職勧奨は使用者の契約解除の申し込みに関して労働者が応じる合意退職であります。
勧奨する側が労働者の肩を軽く叩いて退職を促すというイメージから、俗に「肩叩き」といえば多くの場合、退職勧奨を指すが、「肩叩き」の語は退職強要を指すこともあるほか、使用者でない他の労働者が本人に退職を促すことを指すこともあります。
退職勧奨の性質は、勧奨された労働者は退職に応じる義務はないが、退職に応じると退職金の割り増し(一般的に「会社都合による退職金」という)や雇用保険における失業給付が通常の「自己都合退職」にくらべて手厚い「会社都合退職」扱いとなることがあり、失業給付の待機期間が、通常の3ヶ月ではなく1週間となります。
しかし、逆に使用者からの退職勧奨に応じなければ仕事を取り上げられたり、遠隔地への配転を命じられたり、嫌がらせなどをされることがあり、リストラを多く実施する状況の最近ではトラブルとなっていることが多いようです。
必要以上に退職勧奨をする事を「退職強要(たいしょくきょうよう)」といい、民法上でも不法行為に該当し損害賠償を請求される対象となることがあります。
また教育委員会による指導力不足教員の認定も、学校現場から外れて必ず研修センターに行かなければならず、大半の教員が退職あるいは分限免職となり、現場への復帰率は2割前後と低いことから、退職勧奨に酷似していると指摘されています。
退職勧奨における背景は、企業におけるリストラの一環として行なわれることが多いです。
解雇には解雇ルールがあり、就業規則で明示された普通解雇もしくは懲戒解雇に記載された事項に該当するか、不況時に限り行なわれる裁判の有名な判例である「整理解雇の四要件」に該当することがない限り解雇をすることが許されないです。
そこで人員削減には退職勧奨という方法を用いて使用者にとって「不都合な」労働者にたいし、退職の誘いをかけるようです。
「不都合」とは、働きに対して「賃金が高いもの」や「能力の低いもの」とみなすのが主な考え方ではあるが、「使用者から見て単に気に入らないもの」であっても勧奨をすることは可能であります。
けれども労働者がそれらの勧奨に対して「退職をする意図がない」ということであれば、使用者によるそれ以上の勧奨行為は「退職強要」となり不法行為を構成することになります。
退職勧奨における問題点は、「不当解雇」や「退職強要」に関しては裁判という方法が最も白黒はっきりする解決法となるのであるが、現在の日本では労働者が使用者を相手に裁判を起こすことはかなりの費用と時間を消費するために「泣き寝入り」をすることも少なくないです。
そのようなことがもとで厚生労働省は個別紛争に関する法律などで紛争の解決を迅速に図る機関を設け紛争の解決に成果を挙げています。
ただし、強制力が無いため、その改善も要求されています。
そのため、ドイツで迅速な解決に成果を挙げている「労働裁判所」の検討も日本では持ち上がっており、平成18年より「労働審判法」が施行されます。
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